Ⅰ．解釈の必要性

法は一般に抽象的な記述がされている為、法文を見ただけでは、法の示す内容を把握するのは困難である。そこで、法の適用範囲などの具体的な内容を明確にする法の解釈が必要となる。

Ⅱ．解釈の分類

１．有権解釈
国家機関によってなされる解釈。
①行政解釈・・・行政機関によってなされた解釈
②司法解釈・・・司法機関によってなされた解釈
③立法解釈・・・立法機関によってなされた解釈

２．学理解釈
学理に基づいてなされる解釈の方法。これには、文理解釈と論理解釈がある。
（学問的な理屈に基づく解釈の仕方）

①文理解釈
法文を一般的な語法・文法に従って、そのままの意味で捉える解釈。

②論理解釈（体系的解釈）
一つ一つの法文を全体の法秩序と関連させて論理的・体系的に解釈する方法。これにより、法文相互間の衝突を避けることができる。これには、拡張解釈、縮小解釈、反対解釈、勿論解釈、類推解釈がある。

Ａ．ある事例に該当する法がある場合

　（１）拡張解釈
　文理解釈で得た意味を広げて解釈する方法。

　例：「トラの持込禁止」
　このトラとは、周りに危害を加える可能性のある動物すべてを意味する。


　（２）縮小解釈
　文理解釈で得た意味を縮めて解釈する方法

　例：「トラの持込禁止」
　このトラとは、血統証のないトラのみを意味する

　拡張解釈・縮小解釈は、あくまでも法文に書いてあることを明確にする解釈技法である。拡張解釈は、法の適用範囲を広げているので、罪刑法定主義（予め法によって禁止されていない事柄については、処罰されないという原則）に反するように見える。しかし、法文に書かれている適用範囲は、元から拡張解釈によってなされた範囲だとされるので、罪刑法定主義には反しない。だから、刑事裁判においても拡張解釈は用いられる。


Ｂ．ある事例に該当する法が無い場合

　（３）反対解釈
　法文に書かれていない事柄に対して、法の適用範囲外であるのだから、その法の効果は及ばないと解釈する方法。

例：「トラの持込禁止」
ネコはトラではないから、持ち込んでもよい。


　（４）勿論解釈
　法文に書かれていない事柄に対して、法の趣旨から照らして当然に法の適用範囲に含まれるとする解釈方法。

例：「トラの持込禁止」
ライオンはトラではないから、これには直接は該当しない。しかし、ライオンはトラと同じくらい危険なので、当然持ち込んではいけない。


　（５）類推（解釈）
　法文に書かれていない事例に対して、似ている別の事例に対する法を適用する解釈方法。


　例：「トラの持込禁止」
　子猫はトラではないから、該当しない。危険でもないが、トラと同じく動物なので、子猫も持ち込んではいけない。


・刑事裁判における類推解釈の禁止
　刑事裁判では、類推解釈は罪刑法定主義に反するため、禁止されている。予め法に書かれていない事柄をも刑罰の適用範囲にしてしまうと、国民は何が法で禁止されているのか予め分からず、法に脅えながら生活せざるをえなくなるからだ。国民の予見可能性を確保するために、刑事裁判での類推解釈は禁止されているのである。勿論解釈は、国民の予測可能性を害する恐れはないと考えられるので、刑事裁判においても用いられる。


・勿論解釈と類推解釈の違い
　勿論解釈と類推解釈の違いは、別の事例に対しても適用されるのが当然であるかどうかである。なにが当然かは人によって異なってくるので、勿論解釈と類推解釈の境界線はあいまいである。


・類推解釈と拡張解釈の違い
　また、類推解釈と拡張解釈の境界線もあいまいである。類推解釈と拡張解釈の違いは、法の欠缺が生じているかどうかである。法の欠缺が生じている（該当する法がない）事例にも、法の適用範囲を拡張して適用すれば、類推解釈となる。法文の意味を広げて、もともと法の適用範囲に入るから該当する法はあるとすれば、拡張解釈となる。しかし、もともとの法の意味する適用範囲がどこまでかはハッキリしない。
　電気を盗んで窃盗罪が成立するのかどうかが争われた事例で、裁判所は電気も財物であると解釈して窃盗罪を適用した。裁判所はこれを拡張解釈であるとしている。しかし、「もの」ではない電気を財物と理解するのには無理があり、その解釈は類推解釈であり、罪刑法定主義に反するのではないかという意見もある。このように、類推解釈と拡張解釈の境界があいまいであるために、法の欠缺が生じていると思われる場合にも拡張解釈によって刑法が適用される危険性があり、罪刑法定主義が貫徹されていないと批判されている。



Ⅲ．学理解釈の分類の違い

　学理解釈を文理解釈と論理解釈分類せずに、文理解釈、論理解釈、歴史的解釈、目的論的解釈と分類する考えもある。歴史的解釈、目的論的解釈に基づいて拡張解釈や縮小解釈などが行われるので、これらは、論理解釈と領域が重なり合っている。

①歴史的解釈
　立法者の意図や制定当時の状況など、歴史的意味合いを考慮して解釈する方法。法文から読み取れるそのままの意味とは異なる解釈がなされることがあるので、国民の予測可能性を害してしまったり、社会変動に対応できないなどの欠点がある。

②目的論的解釈
　立法当時の制定理由にこだわらず、法律の文言を客観的・合理的に解釈する方法。ハッピーな社会にするという法の元々の理念・目的を重視する。 



Ⅳ．どのような解釈をすべきかについての諸説



①立法者意思説
　立法者（法律制定者）の意思・意図に基づいて解釈するべきとする考え方。法律は契約と同じく、過去の決定によって未来を拘束するものであることを理由とする。この考えから、歴史的解釈が導かれる。

②法律意思説
　立法当時の制定理由にこだわらず、法律の文言を客観的・合理的に解釈すべきとする考え方。国民が法律を見て、読み取れるであろうと思われる内容とすることにより、国民の予測可能性を確保できる。この考えから目的論的解釈が導かれる。 



Ⅴ．法の欠缺が生じた場合の考え方


　法は、起こりうるすべての具体的な事例を想定して作られたわけではない。そのため、法をそのままの意味で捉え適用すると不合理な結論を導いてしまう場合や、ある法を適用ることが社会的に妥当であるにも関わらず、適用範囲に入らないために適用できない場合が発生しうる。そのような場合に、法解釈を用いて社会的に妥当な結論に修正することが可能である。しかし、法解釈による法の欠缺の補正を行うべきか否かについては、諸説がある。


① 自由法学
　裁判官が自由に法解釈をして、積極的に法の欠缺が生じたケースの補正を行っていくべきとする考え方。これにより、融通の利く、社会的に妥当な結論を導き出すことが可能となる。
　しかし、これは一方で、裁判官が自由に法の内容を決定することができてしまうことになり、裁判官による恣意的な権力の濫用が行われる恐れがある。


② 概念法学
　裁判官は厳格に法に従うべしとする考え方。実定法のみに法的効力を認め、裁判官は勝手な法解釈によって方の内容を改ざんするべきではない。例え不合理な結論を導くことになっても、法をそのまま適用すべきとする。これにより、裁判官による恣意的な権力の濫用を防ぐことができる。
　ただし、融通は利かないので、法の欠缺が生じた場合は、救済されない。同様のケースが発生しないように、その後の法改正によって対処していくしかない。